- 2026年9月14日
健診の肝機能異常、放置は危険?原因と受診の目安
健康診断の結果を見て、「肝機能の数値に異常あり」という文字にドキッとした経験はありませんか?自覚症状が何もないのに「要精密検査」と書かれていると、どうしたらいいか分からなくなりますよね。
「AST・ALT・γ-GTPって何のこと?」「原因はお酒?それともストレス?」「お酒を飲まないのに、なぜ数値が高いの?」といった疑問や不安で頭がいっぱいになるかもしれません。また、症状がないからと放置して良いものか、迷う方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、健診で肝機能異常を指摘された方が最初にやるべきことから、放置するリスク、何科を受診すれば良いのか、そして病院に行く前の準備まで、あなたの不安に寄り添いながら一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、落ち着いて次の一歩を踏み出せるはずです。
著者プロフィール

吉田 健一(よしだ けんいち)
御代志よしだクリニック 院長
出身地: 熊本県熊本市
出身校: 熊本市立西原中学校、熊本高校、熊本大学
経歴:済生会熊本病院に26年勤務してきました。
専門分野:内科、消化器内科、医療安全
趣味:高校大学はボート部に所属し、1995年の福島国体に出場しました。現在は、料理とサッカー観戦を楽しんでいます!
・肝機能検査の数値が何を意味するかが分かります
・肝機能異常の主な原因について理解が深まります
・放置するリスクと早期受診の大切さが分かります
・病院を受診する際の準備や流れが具体的にイメージできます
健診で肝機能異常を指摘された方へ
健診で肝機能の異常を指摘されると、誰でも不安になるものです。しかし、まずは慌てずに自分の状態を正しく知ることが大切です。日々のセルフケアを見直すことも、健康維持には欠かせません。心と体を整える習慣については、セルフケア 3Rとは?心と体を整える新しい習慣の記事も参考にしてみてください。
指摘されたらどうする?まずやるべきこと
健康診断で肝機能の異常を指摘されたら、まずは冷静に健診結果の紙をよく見てみましょう。「要観察」「要再検査」「要精密検査」など、どのような指示が書かれているかを確認することが第一歩です。
次に、どの数値が基準値から外れているのかを把握します。肝機能の項目はいくつかありますが、多くの場合「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」の3つが注目されます。
そして、過去の健診結果が手元にあれば、数値がどのように変化しているかを見比べてみるのも良いでしょう。今年だけ高いのか、それとも徐々に上がってきているのかで、緊急性が変わることもあります。

「要観察」って言われたんですけど、病院に行かなくても大丈夫ですか?

「要観察」は「すぐに治療が必要ではないけれど、生活習慣を見直して来年の健診で変化を見ましょう」という意味合いが多いです。しかし、不安な場合は一度かかりつけ医に相談することをおすすめしますよ。
AST・ALT・γ-GTPが高いと言われたら
健診結果に並ぶアルファベットの略称は、なんだか難しく感じますよね。ここでは、代表的な3つの項目が何を示しているのか、簡単に解説します。
肝機能検査の3つの代表的な項目
これらの数値は、肝臓の細胞がどのくらいダメージを受けているかを示すバロメーターのようなものです。
| 項目名 | 主な役割 | 高くなる原因の例 |
|---|---|---|
| AST (GOT) | 肝臓のほか、心臓や筋肉にも含まれる酵素。これらの細胞が壊れると血液中に増える。 | アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、過度な運動後など |
| ALT (GPT) | 主に肝臓に含まれる酵素。肝細胞が壊れると血液中に増えるため、肝臓の状態を反映しやすい。 | 脂肪肝、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎など |
| γ-GTP (γ-GT) | アルコールや薬剤に敏感に反応する酵素。胆道系の異常でも上昇する。 | アルコールの飲み過ぎ、薬剤性肝障害、脂肪肝など |
※基準値は検査機関によって異なります。詳細はe-ヘルスネット(厚生労働省)などで確認できます。
これらの数値が一つでも基準値を超えていたら、肝臓が何らかのサインを送っている証拠です。そのため、それぞれの数値の意味を少しでも知っておくと、医師の説明を理解しやすくなります。
肝機能異常の原因はストレス?お酒?
「肝臓の数値が高い」と聞くと、多くの人が真っ先にお酒を思い浮かべるかもしれません。確かに、アルコールの分解は肝臓の大きな仕事なので、飲み過ぎは直接的な原因になります。
しかし、原因はそれだけではありません。食べ過ぎによる肥満や、運動不足が引き起こす「脂肪肝」も非常に多い原因の一つです。現代の食生活では、お酒を飲まない人でも脂肪肝になるケースが増えています。
また、意外に思われるかもしれませんが、過度なストレスも肝機能に影響を与える可能性が指摘されています。ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、間接的に肝臓に負担をかけることがあるのです。ストレスと体の関係については、ストレスが胃腸に与える影響とは?原因と対策を優しく解説の記事も併せてご覧ください。

やっぱりお酒と食べ過ぎが主な原因なんですね…。ストレスも関係あるとは驚きです。

そうですね。その他にも、ウイルス性肝炎や自己免疫性の病気、服用しているお薬の影響など、原因は多岐にわたります。だからこそ、自己判断せずに専門医に相談することが大切なのです。
お酒を飲まないのに数値が高い理由
「お酒はほとんど飲まないのに、γ-GTP以外のALTの数値が高い」という方は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の可能性があります。これは、お酒が原因ではない脂肪肝のことです。
主な原因は、肥満、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症など)といった生活習慣病です。つまり、食生活の乱れや運動不足によって、肝臓に中性脂肪が溜まってしまう状態を指します。
NAFLDの一部は、放っておくと肝硬変や肝がんに進行する可能性がある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に移行することがあるとされています。そのため、お酒を飲まないからと安心せず、生活習慣全体を見直すことが重要です。健康的な食生活を目指す一環として、腸活とは?初心者向けに意味から始め方まで優しく解説を参考に、腸内環境を整えることから始めてみるのも良いでしょう。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは
NAFLDは、日本人の成人の約3人に1人が罹患しているとも言われるほど、身近な病気です(参照:日本消化器病学会ガイドライン)。食生活の欧米化に伴い、近年特に注目されています。
自覚症状なしでも受診すべき?
結論から言うと、自覚症状がなくても必ず受診するべきです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、病気がかなり進行するまで症状が現れないという特徴があります。
たとえば、体がだるい、食欲がない、右上の腹部が重いといった症状が出たときには、すでに肝臓の機能がかなり低下している可能性があります。肝臓は再生能力が高い臓器ですが、その能力にも限界があります。
そのため、健康診断での数値の異常は、肝臓が発している数少ない「早期のサイン」と捉えることが非常に重要です。このサインを見逃さずに医療機関を受診することが、将来の健康を守る鍵となります。
肝機能異常を放置するリスクとは
「少し数値が高いだけだから大丈夫だろう」と軽く考えて異常を放置すると、知らず知らずのうちに深刻な病気が進行してしまう可能性があります。
例えば、脂肪肝を放置すると、肝臓の炎症が慢性化して「慢性肝炎」になることがあります。さらに、炎症が続くと肝臓の細胞が壊れて硬くなる「肝硬変」へと進行するおそれがあります。
肝硬変になると、肝臓の機能が著しく低下し、黄疸や腹水などの症状が現れます。そして、肝硬変は「肝がん」の最大の危険因子とされています。肝がんの情報については、国立がん研究センターがん情報サービスもご参照ください。
「沈黙の臓器」だからこそ早期対応が重要
肝機能異常は、これらの深刻な病気につながる最初の入り口かもしれません。症状がないからと放置せず、健診で異常を指摘された段階で、一度専門医に相談することが、最悪の事態を避けるために何よりも大切です。
健診の肝機能異常はかかりつけ医へ相談を
肝機能の異常を指摘されたら、次なるステップは医療機関への相談です。しかし「何科に行けばいいの?」「いつ行けばいいの?」と迷うことも多いでしょう。ここでは、受診に向けた具体的な行動をサポートします。
何科を受診?内科でも大丈夫?
まず、かかりつけの内科医がいる場合は、そこへ相談するのが最もスムーズです。かかりつけ医はあなたの普段の健康状態を把握しているため、的確なアドバイスをもらいやすいでしょう。
もし、かかりつけ医がいない場合や、より専門的な診療を希望する場合は「消化器内科」や「肝臓内科」を受診するのがおすすめです。これらの診療科は、肝臓をはじめとする消化器系の専門家です。
しかし、近所に専門の科がない場合でも、まずは一般の「内科」で問題ありません。内科で初期的な診察や検査を行い、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうという流れが一般的です。
受診する診療科の選び方
・第一候補: かかりつけの内科
・専門を希望する場合: 消化器内科、肝臓内科
・近くに専門科がない場合: まずは一般内科へ
受診の目安となるタイミング
健診結果に「要精密検査」や「要治療」と書かれていた場合は、できるだけ早く受診しましょう。放置して良いことは一つもありません。
「要再検査」や「要観察」と書かれていた場合でも、1〜3ヶ月以内を目安に一度受診することをおすすめします。特に、前年よりも数値が悪化している場合や、肥満・糖尿病などのリスクがある方は早めに相談しましょう。
受診を先延ばしにしている間に、生活習慣を改善しようと試みる方もいますが、自己流の対策が正しいとは限りません。まずは医師の診断を受け、正しい指導のもとで改善に取り組むことが最も効果的で安全です。
病院に行く前の準備と質問リスト
いざ病院に行くとなると、緊張して聞きたいことを忘れてしまいがちです。事前に準備を整えておくと、診察がスムーズに進み、不安も解消しやすくなります。
受診前に準備しておくと良いもの
・今回の健康診断の結果票(必須)
・過去数年分の健康診断の結果票(あれば)
・お薬手帳(服用中の薬やサプリメントが分かるもの)
・聞きたいことや伝えたいことをまとめたメモ
また、医師に質問したいことを事前にリストアップしておくのも有効です。例えば、以下のような質問が考えられます。
・私の数値は、どのくらい悪い状態ですか?
・考えられる原因は何ですか?
・今後、どのような検査が必要になりますか?
・日常生活で気をつけることは何ですか?(食事、運動、飲酒など)
・次の受診はいつ頃がよいですか?
再検査や精密検査の流れについて
医療機関を受診すると、まずは問診と診察が行われます。生活習慣や既往歴、家族歴などを詳しく聞かれますので、正直に答えましょう。
その後、一般的には血液検査で肝機能の状態を再確認します。健診から時間が経っている場合、数値が変化している可能性があるためです。この結果をもとに、さらに詳しい検査が必要かどうかを判断します。
精密検査が必要と判断された場合、「腹部超音波(エコー)検査」が行われることが一般的です。これは、超音波を使って肝臓の形や脂肪の蓄積具合、腫瘍の有無などを直接観察する、体に負担の少ない検査です。その他、必要に応じてCTやMRIなどの画像検査が追加されることもあります。
健診の肝機能異常は放置せず受診を
この記事では、健診で肝機能異常を指摘された際の対処法や知識について解説してきました。最後に、大切なポイントをまとめます。
・健診で肝機能異常を指摘されたら、まずは結果を落ち着いて確認しましょう。
・AST、ALT、γ-GTPは肝臓のダメージを示す重要な指標です。
・原因はアルコールだけでなく、肥満、食生活、ストレスなど多岐にわたります。
・お酒を飲まなくても、脂肪肝(NAFLD)になる可能性があります。
・肝臓は「沈黙の臓器」。自覚症状がなくても必ず受診することが大切です。
・放置すると、肝硬変や肝がんなどの深刻な病気に進行するリスクがあります。
・何科を受診すべきか迷ったら、まずはかかりつけの内科医に相談しましょう。
・専門は「消化器内科」や「肝臓内科」ですが、一般内科でも大丈夫です。
・「要精密検査」ならすぐに、「要観察」でも1〜3ヶ月以内に受診するのが目安です。
・受診の際は、健診結果とお薬手帳、質問メモを持参するとスムーズです。
・病院では、血液検査の再検査や腹部エコー検査などが行われるのが一般的です。
・生活習慣の改善は、医師の指導のもとで行うのが最も安全で効果的です。
・肝機能の異常は、体からの大切なサインです。
・このサインを見逃さず、早期に対応することが、将来の健康を守ります。
・不安を一人で抱え込まず、専門家である医師に相談してください。
健康診断の結果は、あなたの体を守るための貴重な情報です。今回の結果を、ご自身の生活習慣を見直す良い機会と捉え、ぜひ前向きな一歩を踏み出してください。
